サステナブルなオフィス運営とは?企業が実践できる取り組みと進め方を解説

更新日:2026年9月30日
「サステナブルなオフィスを目指したいが、何から手をつければいいのかわからない」という声を、総務やサステナビリティ推進のご担当者から耳にすることが増えてきました。
サステナブルなオフィスというと、環境性能の高い建物への移転や、大がかりな設備の導入をイメージすることもあるかもしれません。しかし、今使っているオフィスでも、電気や紙、備品、会議室などの使われ方を確認し、日々の運用を少しずつ見直していくことはできます。
大切なのは、思いついた施策を増やしていくことではなく、現在の状況を把握し、自社に合った目標とルールを決め、結果を確認しながら改善していくことです。
本記事では、サステナブルなオフィス運営を進める流れを、日々の業務に落とし込める形で解説します。また、会議室などの利用状況を踏まえて、自社ですべてのスペースを常設することだけを前提にしない「Spaceless」という考え方もご紹介します。
制度や統計は今後更新される可能性があります。実際の対応を進める際は、各リンク先の一次情報もあわせてご確認ください。
この記事のポイント
- サステナブルなオフィス運営は、大規模な設備投資だけでなく、現在のオフィスの使い方を把握して日々の運用を改善することから始められる
- 現状把握→目標設定→ルール化→社内浸透→効果測定・改善という流れで進める
- SSBJ基準への対応義務がない企業でも、オフィス運営の見直しには着手できる
- 利用頻度の低い大人数用スペースなどは、必要に応じて外部スペースと組み合わせる方法もある
- 【目次】
- サステナブルなオフィス運営とは?
- サステナブルなオフィス運営は「現状把握」から始める
- 自社に合った目標と優先順位を決める
- 日々のオフィス運営ルールに落とし込む
- ペーパーレスを「仕組み」として定着させる
- 従業員を巻き込み、続けられる運用体制をつくる
- 空間利用を見える化し「Spaceless」を検討する
- KPIで効果を確認し、継続的に改善する
- まとめ
サステナブルなオフィス運営とは?
サステナブルなオフィス運営とは、環境に配慮した建物や設備を導入することだけを指すものではありません。
オフィスで使われる電力、紙、備品、消耗品、スペースなどの状況を把握し、日々の業務の中で無理なく続けられる運用方法を考え、その結果を見ながら改善していくことも含まれます。
大規模な設備投資をしなくても始められる
本記事で扱うのは、主に既存オフィスの日々の運用改善です。移転や大規模な設備更新を予定していない企業でも、現在の環境から取り組めます。
環境省が策定した環境マネジメントシステム「エコアクション21」でも、事業活動に伴う環境負荷を把握し、目標を設定して行動し、その結果を評価・改善していく流れが基本となっています。
令和7年9月末時点では全国7,564事業者が認証・登録を受けており、中小事業者を含め、日々の事業活動の中で環境への取り組みを継続する仕組みとして活用されています。
一方、SSBJ基準は主にサステナビリティ情報を「開示」するための基準です。今回扱うオフィス運営の見直しとは役割が異なるため、SSBJ基準の法定開示対象ではない企業でも取り組むことができます。
SSBJ基準について詳しく確認したい方は、以下の記事をご覧ください。
サステナブルなオフィス運営は「現状把握」から始める
最初から新しい施策を決める必要はありません。まず確認したいのは、「今、何をどのくらい使っているのか」です。
確認に使える情報の多くは、すでに社内に残っている場合があります。
電気料金明細・電力使用量
総務・施設管理部門などが保有しているケースがあります。
複合機の印刷ログ
部署別・月別の印刷枚数などを確認できる場合があります。
購入履歴・廃棄記録
総務・購買・施設管理部門などが管理している情報を確認します。
会議室の予約データ
利用が集中する時間帯や、部屋ごとの利用状況を確認できます。
新しい計測システムを導入する前に、こうした既存データを棚卸しするだけでも現在の状態が見えてきます。
現状を把握しないまま施策を先行させると、後から「本当に効果があったのか」を比較する基準がなくなってしまいます。
エネルギー使用量を確認する
毎月の電気料金明細や管理会社から提供されるデータを見ると、月ごとの使用量や前年との差を把握できる場合があります。
ただし、単純に増減だけを見るのではなく、出社人数、営業時間、季節、レイアウト変更などもあわせて確認します。例えば電力使用量が増えていても、出社人数が前年より大幅に増えているのであれば、単純に「運用が悪化した」とはいえません。
紙・印刷物の使用状況を確認する
複合機のログを部署別・月別などで確認すると、「どの業務で紙を多く使っているのか」を考える材料になります。
堺市環境局が実施したナッジ実験では、複合機に「印刷できる残り枚数」を掲示したグループでは対照群と比較して17.9ポイント悪化した一方、紙類リサイクルボックスを小型化したグループでは26.8ポイントの改善が確認されました。
施策を増やせば、その分だけ効果が大きくなるとは限らない
まず現在の状態を測り、施策を行った後にどう変わったかを見ることが重要です。
堺市「ナッジ活用事例」
廃棄物・消耗品を確認する
コピー用紙、文具、飲料容器、梱包材などについても、購入履歴や廃棄物処理の記録があれば使用量を確認できます。
在庫を抱えすぎて廃棄している備品がないか、まだ使えるものを短期間で入れ替えていないか、といった視点も加えると改善余地を探しやすくなります。
比較条件をそろえる
対象期間
1か月、四半期、1年など、比較する期間をそろえます。
対象範囲
本社、特定フロア、複数拠点など、集計する範囲をそろえます。
集計方法
使用量、人数あたり、床面積あたりなど、計算方法をそろえます。
自社に合った目標と優先順位を決める
現状が見えたら、次に改善したい課題と目標を決めます。
電力、紙、廃棄物、備品、スペースなど、複数の課題が見つかることもありますが、すべてを一度に変えようとすると担当者にも従業員にも負担がかかります。
改善したい課題を絞る
印刷枚数が多ければペーパーレス化、会議室が不足しているのであれば利用状況の見える化など、現状把握で見つかった課題から考えます。
「他社がやっているから」ではなく、「自社の課題」から決める
出社頻度、オフィス規模、業務内容、設備は企業ごとに異なります。自社の課題から逆算することで、取り組む目的も共有しやすくなります。
目標・期限・担当を具体化する
- 月間の印刷枚数を、半年後までに前年同期比で10%減らす
- 会議室の予約時間と実利用時間の差を、四半期ごとに確認する
- 特定の消耗品の購入量を、今年度中に前年度より減らす
「紙を減らす」「省エネを進める」だけでは、どこまで進んだかを判断しにくいため、可能な範囲で数値、期限、担当者を決めます。
取り組みの優先順位を付ける
1. 効果
どの程度の改善が見込めそうか。
2. 実行しやすさ
現在の業務の中で無理なく実行できるか。
3. 費用
導入・運用にどの程度の費用がかかるか。
4. 働きやすさ
従業員の負担や使いやすさへどう影響するか。
日々のオフィス運営ルールに落とし込む
目標を決めた後は、「誰が、いつ、何をするのか」まで具体化します。
「環境に配慮しましょう」「こまめに節電しましょう」と呼びかけるだけでは、人によって判断が変わりやすくなります。普段の業務手順に組み込むことで、継続しやすい状態をつくります。
確認する担当とタイミングを決める
照明、空調、OA機器などを、誰がいつ確認するかを決めます。
購入時の基準を決める
価格や機能だけでなく、数量、耐久性、修理、再利用なども確認します。
処分までの流れを決める
分別、回収、他部署での再利用、メーカー回収などを整理します。
点検の時期を決める
空調フィルター、照明、OA機器などを定期的に確認します。
備品・消耗品の調達では購入後も見る
「環境配慮型製品」を選ぶ際の参考になるものの一つが、グリーン購入法の基本方針です。
紙類、文具類、オフィス家具等、OA機器などの分野ごとに、国等の機関が特に重点的に調達を推進する環境物品等として「特定調達品目」が定められ、その判断基準も示されています。
企業に同じ調達を義務付ける制度ではありませんが、自社の購入基準を考える際の参考情報として活用できます。
また、購入時に「壊れたら修理できるか」「部署間で再利用できるか」まで確認しておくと、入れ替えや廃棄の際の判断もしやすくなります。
環境省「グリーン購入法について」
ペーパーレスを「仕組み」として定着させる
ペーパーレス化は、単に印刷を禁止すれば進むものではありません。
紙を使わなくても業務が成立するフロー、閲覧環境、保存方法、例外ルールまでセットで考える必要があります。
-
会議資料をデータで共有する
オンラインストレージの保存場所を統一する、会議室のモニターへ投影するなど、「どこで資料を見るのか」まで決めます。
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申請・承認・契約を電子化する
社内申請や稟議、契約など、紙が多く残りやすい業務から電子化できる範囲を確認します。
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保存・検索ルールを整える
保存場所、ファイル名、アクセス権限、保存期間、バックアップなどのルールを整えます。
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紙が必要な場合の例外を決める
「紙は禁止」とするのではなく、取引先や契約条件などに応じて紙を使うケースを決めておきます。
JIPDECの「企業IT利活用動向調査2026」では、電子契約の利用率は80.2%となり、初めて8割を超えました。
一方で、取引先への説明・調整、紙契約との併用、データの保管・検索など、導入後の運用課題も挙げられています。
「電子化すること」ではなく「電子化した状態で業務を回せること」が重要
ペーパーレス化も、導入した時点で終わりではありません。実際の業務フローに合わせて使いやすい状態へ整える必要があります。
従業員を巻き込み、続けられる運用体制をつくる
サステナブルなオフィス運営は、総務やサステナビリティ担当者だけでは完結しません。
照明を使う人、会議室を予約する人、備品を購入する人など、オフィスで働く人の日常的な行動とつながっています。
1. 担当を明確にする
誰がデータを集め、結果を確認し、ルールを見直すかを決めます。
2. 目的を共有する
「何をするか」だけでなく、「なぜ行うのか」まで伝えます。
3. 現場の声を集める
実際に利用する従業員だから気づける改善点もあります。
4. 結果を共有する
数値の変化を共有し、次の改善につなげます。
取り組みを増やしすぎると、「また新しいルールが増えた」と感じられる原因にもなります。
- 使われなくなったルールをやめる
- 複数の確認作業を一つにまとめる
- 手作業の確認を既存システムから取得する
といった「減らす」視点も持ちながら、日常業務に大きな手間を加えず続けられる仕組みにすることが重要です。
空間利用を見える化し「Spaceless」を検討する
電気や紙と比べて見落とされやすいのが、オフィスの「空間」です。
会議室予約システムなどを使い、どの部屋が、いつ、何人で使われているのかを確認します。
予約と実利用
予約されている時間と実際に使われている時間に差がないか。
部屋と人数
大きな会議室を少人数で使い続けていないか。
曜日・時間帯
特定の曜日や時間だけ需要が集中していないか。
一時的な需要
年数回の研修や全社会議のためだけのスペースがないか。
会議室の予約データだけでなく、実際の利用状況も確認できる場合は、予約時間と実利用時間にどの程度の差があるかも見ておきましょう。
予約上は埋まっていても、実際には利用されていない時間が多ければ、「会議室が足りない」という判断自体が変わる可能性があります。
すべてのスペースを常設することだけを前提にしない
利用状況を確認すると、「日常的に必要なスペース」と「特定の場面だけ必要なスペース」が見えてくることがあります。
すべて自社で常設する場合
- 大人数用の会議室も常に確保する
- 特殊な映像・音響設備も社内に保有する
- 年数回の利用でも固定的にスペースを持つ
- 自社設備を前提に開催方法を考える
利用状況に応じて使い分ける場合
- 日常的に使うスペースは自社で確保する
- 大人数の研修は必要なときだけ外部を利用する
- 特殊設備が必要な催事だけ設備のある会場を選ぶ
- 人数・目的・アクセスに合わせて場所を選ぶ
このように、すべての業務や設備、スペースを自社オフィス内に常設することだけを前提にせず、目的や利用頻度に応じて場所を選ぶ考え方が「Spaceless」です。
もちろん、外部スペースを使えば必ず環境負荷が小さくなるわけではありません。参加者の移動距離が増える場合など、条件によって状況は変わります。
「自社で持つ」か「外部を使う」かの二択ではない
利用頻度、必要な広さ、設備、アクセスなどを見ながら、日常的に必要なものと、必要なときだけ確保するものを組み合わせる考え方です。
外部スペースが検討しやすいケース
年数回だけ利用する
全社会議や合同研修など、日常的には使わない大人数スペース。
開催ごとに人数が変わる
参加人数に合わせて部屋の規模を変更したい催事。
特殊設備や好立地が必要
自社にない設備や、複数拠点から集まりやすい場所が必要な催事。
ミーティングスペースAPを活用する
外部スペースを組み合わせる方法の一例として、株式会社TCフォーラムが運営する「ミーティングスペースAP」があります。
東京・横浜・名古屋・大阪の施設から、エリアや人数などの条件に合わせて会議室を探すことができます。また、専任コーディネーターが問い合わせから開催当日までサポートしています。
「まだ人数が決まっていない」「開催内容を整理している途中」といった段階から、会場やレイアウト、必要な設備について相談できます。
また、ミーティングスペースAPでは、施設で使用する電力の実質再生可能エネルギー100%への切り替えをはじめ、サステナビリティに関する取り組みも進めています。
開催条件に合わせて会場を探す・相談する
人数や目的、開催エリアなどに合わせて会場を検索できます。具体的な条件が固まっていない段階でもご相談いただけます。
KPIで効果を確認し、継続的に改善する
サステナブルなオフィス運営は、施策を実施した時点で終わるものではありません。
取り組み前と取り組み後を同じ条件で比較し、「何が変わったのか」「次にどこを見直すのか」を考えます。
KPIは取り組みの目的とつなげる
- 電力使用量
- 印刷枚数
- 廃棄物量
- 備品購入量
- リユース件数
- 会議室の実利用率
- 予約時間と実利用時間の差
印刷枚数を減らすことが目標なら印刷ログ、スペース利用を見直すなら会議室の実利用時間など、施策の結果を確認できる指標を選びます。
改善時に注意したい4つのこと
施策を増やしすぎない
自社の課題と関係の薄いルールまで増やさない。
担当者だけに依存しない
担当者が変わっても続けられる仕組みにする。
働きやすさも見る
環境面だけでなく業務効率や使いやすさも確認する。
確認できた事実で伝える
社外発信では対象範囲や実際の数値を明確にする。
働き方や出社人数、オフィスレイアウトが変われば、適切なルールも変わります。半年・1年など一定のタイミングで、「今もこのルールが必要か」を見直すことも大切です。
まとめ
サステナブルなオフィス運営は、大規模な設備投資や移転を行うことだけが選択肢ではありません。
まず現在のオフィスで、電力や紙、備品、スペースがどのように使われているかを確認し、そこから自社に合った目標を設定します。
その目標を日常業務のルールへ落とし込み、従業員と共有し、定期的に結果を確認して改善する。このサイクルを継続することが基本です。
まずは「今どのように使っているか」を確認するところから
現状把握→目標設定→日常業務への落とし込み→効果確認という流れで、小さく始めて継続的に改善していくことができます。
また、空間の利用状況を確認した結果、年数回しか使わない大人数用スペースや特殊な設備がある場合は、必要なときだけ外部スペースを組み合わせる方法もあります。
自社で常設するものと、必要なときに利用するものを分けながら、現在の働き方に合うオフィス運営を考えてみてはいかがでしょうか。